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Crop Care

当社専門家の意見:生物学的製剤

農業で使用される製品は、従来の化学製品から持続的な代替製品へと移行しつつあります。生物学的製剤は興味深い選択肢の1つです。

生物学的製剤は、化学物質とは対照的に、生物由来の有効成分を用いた製品です。微生物(真菌類や細菌類など)や高分子(ペプチド、タンパク質、RNAなど)が有効成分として用いられます。これらの成分が製剤化され、生物肥料(生育を促す)、バイオスティミュラント(植物の回復力を高める/収量を上げる)、生物農薬(害虫を駆除する)といった製品が生み出されています。

この製剤化は、化学物質を有効成分とする場合と大きく異なります。化学物質は研究室で作られ、安定な物質として設計されます。これに対し生物学的製剤は、大きく複雑な構造を持ち、自然界から適応させる、脆弱な物質です。熱や紫外線(UV)、湿気、あるいはさまざまな天然由来の微生物や酵素によって、死滅したり、損傷や分解が生じたりする場合があります。 

生物学的製剤では通常、レオロジー剤、分散剤、乳化剤、保護剤といった多くの配合成分が必要です。ただし、生物由来の有効成分を環境から保護すると同時に、その成分自体が害を引き起こすことがないよう、これらの成分の選定や配合は特に慎重に行わなければなりません。 

当社のレポートでは、さまざまな生物学的製剤における課題に着目しています。このブログでは、その一部について簡単に取り上げます。

微生物の安全性を保つ

微生物は、強化剤として種子に使用されます。また、葉面散布用の製品としても製剤化されています。 

こうした製品の製剤化における最初の目標は、生産中に微生物を死滅させないことです。一般的な成分の多くは微生物にとって有害となり得るため、製剤に適した成分の慎重な選定および試験が必要となります。

次の目標は、微生物を不活性な状態に保つことです。不活性であれば、必要とされる時点まで「休眠」が保たれます。生育のための水が与えられた時点で覚醒し、一度生育を始めてしまえば、地面に到達しない限り、自らのリソースを使い果たして死滅します。そのため、素早く乾燥させ、必要時まで乾燥した場所で保管することが重要です。 

種子処理剤は通常、生物学的な有効成分および補助的な配合成分を含有する液状のコーティング剤として種子に付着します。これらの成分によってある程度は保護されますが、さらに保護が必要であれば、厚みのあるクラストを使用する場合もあります。 

葉面散布用の製品は葉の茂みの上に留まる性質を要する場合があり、そのためには、他の成分は土壌を介して送達されるとしても、一部の配合成分が葉に付着して、UV防御機能を果たさなければなりません。散布剤の場合は分厚い保護コーティングで微生物を安全に包んでしまうことはできませんが、多くの製品は可溶性の粉末として製剤化されて真空包装され、溶解時まで安全かつ乾燥した環境が保たれます。

適切な配合は微生物によって異なり、微生物パラメータ、使用対象の種子、使用方法、防除対象に左右されます。

RNAiを農地へ導入する

高分子製剤は、新たに開発された、さらに複雑な製品です。高分子を用いた生物学的製剤に重大かつ破壊的な革新をもたらしたのが、RNA干渉(RNAi)です。これは、自然に存在するプロセスを利用して植物細胞や昆虫細胞にRNAを取り込ませ、例えば除草剤抵抗性を発現する遺伝子を抑制したり、害虫の生存に必要なタンパク質の産生を妨げたりする技術です。これにより標的を高度に絞り込める可能性があります。

多くの高分子成分と同様、RNAiの課題としては、(1)ペイロードの送達、(2)安全性を保ち、使用対象と吸収または摂取対象との間(例:葉面)に留まること、(3)保管中に機能が損なわれないこと、の3点が挙げられます。 

既存の解決策はなく、高分子成分を送達可能な製品にどう配合するかを解明するためには、引き続き研究が必要です。高分子製剤をその開発の過程で製品化できるか否かは、農業環境に送達可能な製品として配合できるか否かに左右され、これはCrodaやその他企業において活発な研究が行われている分野です。

生物学的製剤を試験する

生物学的製剤は非常に複雑なため、多くの成分を組み合わせることによって生じる影響を完全に断定することは不可能です。そのため、すべて試験する必要があります。 

まず製剤の各成分を個別に試験して、生物学的適合性、すなわち生物由来の有効成分にどう影響するか、またどの程度の濃度で毒性を生じる可能性があるかを評価します。 

さらに、製剤中のすべての成分を合わせて試験する必要があります。成分によっては、単独では問題がなくとも、混合された場合に微生物の生存に悪影響を生じる可能性があります。すべての成分の厳格な試験を個別に実施すれば、その混合物によって有害作用は生じないという高い確信が得られますが、それでも100%ではないため、最終製剤の試験も必要となります。

結論:生物学的製剤を正しく理解する

脆弱な生物を製剤化し、管理されていない条件下の棚に数ヵ月間置かれた末に複雑なリアルワールドの生態系に投入されるような製品を創り出すことは、非常に困難なタスクです。

これをその都度やり遂げるには、製剤化のあらゆる選択肢を探索しなければなりません。そのため、さまざまな特性を持つ化学物質に目を向けて、ベストなものを探す必要があります。また、製剤化における専門知識を活用し、生物学的製剤を保護すると同時に強化し、生物学的製剤を損なうことのない、その上で持続可能かつ拡張可能な費用効率の高い方法で、各要素を組み合わせる必要があります。さらに、製剤の厳格な試験を行って、目的とする作用が得られることを確認しなければなりません。

当社が新たに発行したホワイトペーパーである「生物学的製剤(Formulating Biologicals)」では、本ブログで挙げた問題について詳しく考察するとともに、さらに考察や探索を要する問題について取り上げています。

Crodaにできること

当社は、農業環境で使用される生物学的製剤や化学製剤について、確かな理解をご提供します。また、適切な製剤や送達システムの設計に役立つ特殊な化学製品の膨大なライブラリーと、生物学的製剤用の高度な試験施設を保有しています。 

しかし、当社はこの新たな分野における旅の途中であり、生物製剤の製剤化に奮闘している方々や、製剤化における解決策の開発に取り組んでいる方々からお話を伺い、全員で協力して製剤化における課題の理解を深め、解決につなげたいと考えております。詳しくはSteven Adamsまでご連絡ください。

執筆者

  • Steven Adams Global Research and Technology Manager

Whitepaper Formulating biologicals for agriculture

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